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初中級ダブルスの実戦的ショートサービス戦術

<2021/11/12公開>

これまで8回に渡り、ショートサービスを科学的に考えてきましたが、理屈がわかったところで、ゲームに活かせないと意味がありません。

研究の締めくくりとして、ショートサービスをゲームでどう使うのか、初中級ダブルスを前提に、実戦的なショートサービス戦術をご紹介します。

今回の研究で得られた科学的根拠に、私の長い競技経験に基づく経験的根拠をプラスした、高い効果を期待できる戦術です。

まずは、その基礎となるポイントからお話しします。



(1)サーブを打つ時のポイントは?

サーブを打つ時に考えるべきポイントは3つです。
 

ポイント1:イメージした軌道にシャトルをのせる


ポイント2:3球目が有利になるコースへサーブする

ポイント3:レシーバーのタイミングを外してサーブする



一つずつ見ていきましょう。


ポイント1:イメージした軌道にシャトルをのせる

研究レポート1研究レポート2研究レポート3で解説したように、できるだけ前の高い打点から自コート側に頂点が来る軌道でサーブすれば、多少浮いても、厳しくプッシュされにくくなります。

ネットすれすれを狙わなくてよくなる分、サーブミスも大幅に減らすことができます。

研究レポート4研究レポート5研究レポート6で解説したように、サーブ前の動作をルーティン化し、スイング軌道、シャトルの持ち方や放し方、ヒットポイントを意識しながら繰り返し練習することで、サービス軌道のばらつきを低く抑えておくことも重要です。

相手レシーバーの中には、体が大きくて威圧感のある人もいれば、前への動きの速い人もいます。

プレッシャーや不安に左右されないためにも、無意識にいつでも同じサービス動作ができるようになるまで練習しましょう。

失点しづらい軌道でサーブできること、サーブが大きくばらつかないことは、戦術を機能させるための前提条件です。


ポイント2:3球目が有利になるコースへサーブする

有利になりづらいコースへのサーブを多用しないことと、レシーバーの特徴に応じてコースを決めることが重要になります。

研究レポート7研究レポート8で解説したように、サーブするコートと打つコースによってサーブの難易度が変わります。

サイドへのサーブなど、よまれると3球目が不利になりやすいコースへ打つ時は、レシーバーの裏をかくと同時に、反応を遅らせられる根拠も必要です。

また、フォアで取らせるか、バックで取らせるかで、返球コースをある程度コントロールできます。

3球目までの展開をイメージしてサーブのコースを選択することが大事ということです。


ポイント3:レシーバーのタイミングを外してサーブする

サーブをセットしてから、いつも1秒後に打つとすると、だんだんレシーバーの動き出すタイミングが合ってくるのが普通です。

1秒後ではタイミングが合うようなら、2〜3秒遅らせて打つような工夫が必要です。

毎回時間を変えると、サーブがばらつきやすいので、タイミングを外せる時間を見つけたら、またタイミングが合い始めるまでは、そのまま続けた方が良いでしょう。


それでは、この3つのポイントを押さえた上で、戦術を見ていきましょう。



(2)初中級ダブルス実践的ショートサービス戦術

先ほど挙げた3つのポイントを実践すること、つまり、イージーミスを減らすことで失点を抑え、サーブの配球とレシーバーとの駆け引きで得点確率を上げる、これだけでも立派な戦術になります。

そこから、さらに一歩踏み込み、ゲームの流れまでコントロールできると、戦術が高い効果を発揮するようになります。

相手があることなので、必ずしも自分の思うようにゲームの流れをコントロールできるとは限りませんが、それでも、「何とか悪い流れを変えよう」、「良い流れをキープしよう」と考えながらプレイするのかしないのかでは結果が大きく変わってきます。

では、具体的にどういうことをすればよいのでしょう?

私自身も実践している戦術を、ゲームの序盤、前半、後半、終盤に分けて解説します。


ゲームの序盤:サーブの感覚を良くしレシーバーの特徴を掴む

ゲームの序盤、サーブが2巡するくらいまでは、その後の展開を有利に進められるよう、コンディション調整と情報収集に重点を置きます。

具体的には、サーブを安定させることと、レシーバーの特徴を掴むことを考えます。


絶対に避けたいのは、いきなりサーブミスを連発することです。

序盤にサーブミスばかりすると、自分のサーブの調子も、レシーバーの特徴もわからないままゲームが進んでしまいます。

試合の序盤は、ネットぎりぎりに完璧なサーブを打とうとせず、ネットの10cmほど上を通して確実に入れるサーブを打つようにします。

最初の数本は、必ずセンターの最短距離となる場所へショートサーブを打ちます。

ゲームを通して最も多く打つサーブに対して、レシーバーがどんな反応をするか見るためです。

こうすることで、イメージしたサーブの軌道からどれくらいずれたか、レシーバーがどの打点で取ったか、この2つの重要な情報を得られます。

思った以上に浮いてしまったとしても、それが原因で失点したとしても全くかまいません。

イメージした軌道とのずれがあれば、次のサーブで強弱を調節します。

同時に、このレシーバーには、どれくらい浮くとどの高さから打たれるというのがわかります。

多少浮いてもプッシュして来ないとわかれば、ゲームを通して、ミスしない高さでサーブを打ち続ければよい訳です。

パートナーがサーブする時にも、同様に、レシーバーの反応を意識して見るようにします。

レシーバーから得られる情報は、サーブへの反応の速さ、足を踏み出す距離、ラケットの出し方などです。

センターへショートサーブを出すと、どの位置で打たれるか、フォアとバックどちらで取るか、ということがわかります。

打点と打ち方がわかれば、返球されやすいコースに意識を置きながら3球目に備えることができます。

最初から苦手なレシーブを試みる人はほとんどいないので、どういう返球を中心にして来るタイプなのかということも、だいたいわかります。

こういうレシーバーの癖は、この後、ゲーム展開を有利にするために使います。

また、レシーバーの構えへの入り方や表情は、最初からずっと注意して見ておきます。

これはかなり重要なポイントで、大事な局面でレシーバーの心理状態を見極めるのに役立ちます。

緊張していたり、集中力が落ちていたり、ゲームが進むほど、相手の心理状態がわかるようになります。


ゲームの前半:嫌がるタイミング、苦手なコースを見つける

11点のインターバルに入るまでは、相手の嫌がるサーブのタイミングを見つけることと、相手の得意、不得意を見極めることに重点をおきます。

イメージ通りの軌道で打ったのに高い打点で取られたとしたら、タイミングが合ってしまったか、山を張られたかのどちらかの可能性が高いので、サーブを打つまでの時間を長くしたり、1本ロングサーブを出してショートサーブに山を張れなくしたりします。

こういう微調整を繰り返し、気持ちよくレシーブされないタイミングを掴みます。

センターへのサーブをフォアで厳しく返球されるようなら、体の真ん中の取りづらいところへサーブしたり、バック側へサーブしたりしてみます。

こうやって、前半のうちに、どのコースが強くてどのコースが弱いとか、よくどういう返球をして来るといったことを、相手2人に対して、それぞれ分析しておきます。


ゲームの後半:3球目が有利になるサーブを多用する


インターバル明けからは、3球目が有利になる確率が高いと思えるサーブを出すようにします。

ゲームも中盤に差し掛かると、シャトルを長めに持ってサーブすれば上げてくれることが多いとか、このコースは少し浮いただけでもやられるとか、だいたいわかってきます。

相手の嫌がるコースやタイミングを見つけて、通用する間は同じサーブを続けます。

相手の得意、不得意が見つけられなければ、センターへタイミングを合わされないようにサーブすることをおすすめします。

最短距離でサーブした方が、左右に角度を付けたレシーブをされづらく、サーブミスする確率も低くできるからです。

相手が対応し始めたら、また少しコースをずらしたり、1本ロングサーブを出したりして、気持ちよくレシーブさせないようにします。

また、相手のレシーブに入る動作や表情はいつもチェックするようにします。

こちらが連続得点できている時や、相手にミスが続いている時などは、間を空けようとして動作を遅らせてきたり、不安な表情になっているのがわかったりします。

そういう時は、冷静になる時間を与えないよう、早くサーブをセットしてプレッシャーをかけます。

逆に、自分たちの流れが悪い時は、少し間を取り、集中力を高めてからサーブするようにします。



ゲームの終盤:通用する根拠のあるサーブを自信を持って打つ

ゲームの終盤は、自信を持ってサーブすることと、通用する根拠のあるサーブを打つことを重視します。

ゲームも終盤になると、レシーバーの情報はたくさん集まっています。

レシーブの癖や、効くコース、効かないコースがわかっているはずです。

基本的には、レシーバーが苦手とするコースへ苦手なタイミングでサーブを打つことを徹底します。

1点ほしい場面になると、意表を突く返球をしてくるレシーバーもいます。

そういう時も、レシーバーの動作や表情を注意深く観察し続けていれば、多くの場合、事前に察知することができます。

立ち位置が少し前になったり、少し動作が速くなったり、表情から冷静さが消えたり、ちょっとした差が違和感として感じられます。

違和感を感じたら、レシーバーの立ち位置や重心、体の向き、ラケットの位置などを根拠に、サーブを変えるかどうか判断します。

例えば、これまでよりも立ち位置が前で後ろ重心になっていたら、すぐには下がれないからロングサーブが効くだろうとか、センターぎりぎりで構えているからサイドへのサーブには反応が遅れるだろうとか、サーブを変えた方がよい根拠があればそうします。

注意してほしいのは、「ショートサーブばかり打ってきたから、そろそろロングサーブが効くはず」というのは、根拠ではなく願望だという点です。

もともと後ろへ動きやすい構え方をしているレシーバーに対して、急にロングサーブを打ったところで、普通に反応されて打ち込まれるのがオチです。

明確な根拠がなければ、サーブのコースは変えず、少しシャトルを長めに持ってタイミングをずらすことで保険をかけます。

どんなサーブを選ぶにせよ、勝っていても、負けていても、競っていても、絶対に狙ったサーブを打てると思い込むようにします。

「もうミスできない」とか「浮いたらどうしよう」とか考えると、そうなる確率が上がるだけです。

3球目をできるだけ前でさばこうとか、ハーフへ返して上げさせようとか、3球目のイメージを持つと、サーブが上手くいきやすいです。

3球目を意識するということは、3球目がある前提に立っていますので、サーブを失敗するイメージがなくなります。


3ゲームマッチの場合、2ゲーム目や3ゲーム目は、1ゲーム目序盤から前半に行ったアクションは省略します。

2ゲーム目、3ゲーム目は、相手もサーブのタイミングに山を張ったり、レシーブコースに変化をつけて、流れを変えようとして来るかもしれません。

何か仕掛けられても、サーブのコースを変えた方がいいか、タイミングだけ変えた方がいいか、冷静に判断して対応します。

3ゲームを通して、同じコースへ同じタイミングで打つサーブがずっと通用し続けることは、まずありません。

レシーバーの変化に気づいたら、素早く対応して、良い流れをキープしようとすることが大切です。


以上が、私のおすすめするショートサービス戦術ですが、これで100%勝てるということはありません。

それでも、何もしないよりは、はるかに得点確率が上がり、勝率も上がります。

サーブはすべてのラリーの始まりなので、その出来が勝敗を大きく左右します。

中でも最も良く使うショートサーブは、最も重要なショットと言えます。

だからこそ、ショートサーブに拘る理由は大いにあるのです。



(3)ショートサービス実践的練習法

ショートサービスは、理屈を押さえて練習すれば必ず安定してきます。

しかし、ただ繰り返し練習しているだけでは、ゲームで通用する活きたサーブにはなりません。

一本一本、ゲームをイメージしながら練習することが大切です。

ここでは、実戦的なショートサービス練習法をご紹介します。

おすすめの練習法は次の3つです。

・サーブ前の動作をルーティーン化する練習法

・軌道をイメージしてシャトルを乗せる練習法

・タイミングを考えて打つ練習法


サーブ前の動作をルーティーン化する練習法

サーブの動作は、シャトルを拾うところから、もう始まっています。

サーブをセットするまでの一連の動作を決めて、繰り返し練習しましょう。

特に、ゲーム形式の練習時は、必ず意識してやって下さい。

例えば、こんな感じです。

 
シャトルを拾う

→サーブする場所まで歩く

→右足、左足の順で決まった位置に足を置く

→右足に重心を置く(右足の膝は曲げない)

→ネットの白帯を見て、いつも通りの距離感かチェックする

→シャトルを持っている左手を真っ直ぐ前に上げる(肘は曲げない)

→左腕の角度(上げ具合)をチェックする

→ネットの白帯とシャトルを交互に見て、いつも通りの距離感かチェックする


いつも決まった順番で同じ動作を繰り返すようにすると、ルーティン化されます。

ルーティーン化された動作は、一回一回、頭で考える必要がないため、高い再現性が期待できます。

サーブを打つタイミングだけに意識を集中でき、サーブのバラツキも抑えられる、一石二鳥の方法です。

いろいろ試してみて、しっくりくるサーブのやり方を見つけたら、無意識にできるようになるまで、繰り返し練習しましょう。


軌道をイメージしてシャトルを乗せる練習法

サーブのセットが完了したら、サーブの軌道をイメージします。

基本はセンターへのショートサーブなので、そのサーブを中心に練習しましょう。

ネットの少し手前に頂点を作り、 ネットの数cm上を通り、相手サービスラインの数cm先に落ちる軌道をイメージします。

あとは、イメージした軌道にシャトルを乗せるつもりでサーブします。

サーブに苦手意識のある方は、ネットの20cm上を通し相手サービスラインの30cm先に落ちる軌道から始めてもOKです。

ほとんどサーブミスしなくなったら、軌道をもう少しネットやサービスラインに近づけてみましょう。

10cm以内まで近づけられるようになると言うことありません。

時々、サーブを打つ前に手元しか見ない方がいますが、頭の中で軌道をイメージするより、実際にネットやコートを見てイメージを作った方が、サーブの精度は上がると思います。

センターへのサーブは、レシーバーにどう取らせるかも考えないといけません。

レシーバーのフォア側、バック側、その中間と、10cmレベルでコースを打ち分ける練習と、同じフォームでショートサーブとロングサーブを打ち分ける練習もしましょう。

ゲーム形式の練習では、サーブコースによってどこに返球されやすいかを意識するようにして、実戦感覚を養って下さい。


タイミングを考えて打つ練習法

ゲーム形式の練習をする時は、レシーバーとの駆け引きを練習する又とないチャンスです。

いつも同じタイミングでサーブせず、サーブをセットしてから打つまでの時間を変えてみて下さい。

レシーバーの反応がまるで変わります。

タイミングを外すだけで、返球が甘くなったり、簡単にシャトルを上げてくれたりすることが増えるはずです。

レシーバーのタイミングを微妙に外す感覚は、一朝一夕には養われません。

繰り返し練習しておかないと、試合では通用しません。

レシーバーの動作や表情を見て、心理状態を予想しながら、タイミングを変えるようにすると、とても実戦的な練習になります。



<最後に>

以上で、ショートサービス研究室は閉講となります。

今回、ショートサービスに科学のメスを入れようと思ったのには、きっかけがありました。

昔の私はサーブが苦手で、対戦相手のレベルが少し上がると、簡単にネットに掛けたり、浮いてプッシュされたりしていました。

サーブが原因の失点が、1ゲームで5,6点はあったと思います。

サーブの立ち位置を変えてみたり、ロングサーブを増やしてみたり、絶対に上手くいくと言い聞かせて打ってみたりもしましたが、一向に効果的なショートサーブを打てませんでした。

いろいろ試行錯誤するうちに、ミスするのにはミスする理屈が、球が浮くのには球が浮く理屈があると気づき、徹底的に理屈を考えるようになってから、少しずつサーブが改善されていきました。

いま私の周りにも、サーブで悩んでいる方が大勢いらっしゃいますが、サーブの打ち方はみなさん違っています。

私のサーブの打ち方を教えたりもしますが、私にとっての正解は他の人にとっても正解なのか、100%の自信を持てませんでした。

サーブはメンタルにも大きく影響を受ける、非常に繊細なショットです。

ちょっとしたことで良くなったり悪くなったりします。 

私のサーブは、この先もずっと通用し続けるのだろうか、何かちょっとしたずれがきっかけで急に不調になったりしないだろうか、そう思うと不安にもなってきました。

私自身のプレイのためにも、指導する立場にある者としても、ショートサービスの技術に、絶対的な根拠がほしいと思うようになりました。

止まったシャトルを打ち、比較的遅い速度で飛行するショートサービスの特性は、物理の計算がしやすいという点で好都合でした。

科学に基づく結果ほど客観的な根拠はありません。

最も有効なサーブの打点、軌道の頂点の位置、左右コートでの感覚の違いなど、どれを取っても私の経験的根拠から正しいと思っていたことを支持する結果になりました。

客観的な裏付けを得たことで、これからは自信を持ってショートサービスの技術を語ることができます。

理屈を考えずして上達なしです。

上手くいった時も、上手くいかなかった時も、理屈を考えれば次のステップアップのヒントが見つかります。

この「ショートサービス研究室」をお読みになった方が、サーブをもっと改善したいと思われたり、お悩みを解決するヒントを見つけたり、自信を持ってサーブできるようになったりしたなら、これ以上うれしいことはありません。

各研究レポートの最後に、技術的なアドバイスを書いていますので、そちらも参考にして下さいね。


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最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。


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