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最もプッシュされにくい立ち位置と打点はどこか?

<2021/9/24公開>

前回の研究では、軌道の頂点をネットよりも少し手前に持って来ると、浮かないサービスになることを、物理の軌道計算から導き出しました。

では、サービスを厳しくプッシュされないためには、どこに立って、どれくらいの打点で打つのがよいのでしょう?

サービスの打点は高い方がよいのでしょうか、少し下げた方がよいのでしょうか。
できるだけ前から打った方がよいのでしょうか、少し下がって打った方がよいのでしょうか。



物理の理屈に従うと、この絵のように、遠い位置からサーブするほど、ネットを越えた後のシャトルの位置を低く保つことができます。

下がった位置からサーブした方が、プッシュされにくいように見えますが、本当にそうなのでしょうか?

本研究では、最もプッシュされにくいサーバーの立ち位置と打点の解明に挑みます。




<研究報告>

言うまでもありませんが、レシーバーの打点を低くできるほど、プッシュされにくくなります。
その打点は、サービスの軌道と、レシーバーの動きによって決まります。

サービスの軌道は物理的に計算できますので、レシーバーの動きさえわかれば、打点を計算できます。




(1)レシーバーの反応時間は?

サーバーに一切サーブの癖がないとすると、レシーバーは、シャトルがサーバーのラケットを離れた瞬間に、初めてショートサービスだと認識し、一歩前へ踏み出してシャトルを捉えます。

どんな人でも、ショートサービスだと認識するのにコンマ数秒、一歩前に踏み出すのにコンマ数秒かかります。
試合動画を研究したところ、その合計時間は、男子上級者で0.5秒、初中級の方で0.6秒程度です。女子の方だと0.1秒ほど長くなります。

本研究は初中級の方を対象としますので、ここでは、男子:0.6秒、女子:0.7秒として話を進めます。

【前提条件1:レシーバーがシャトルに触るまでの時間】
初中級男子 0.6秒
初中級女子 0.7秒



(2)レシーバーの移動距離は?

次に、レシーバーは、一歩踏み出すことにより、どの位置でシャトルに触れるかを計算してみます。

初中級の方なら、男子で靴一足分(30cm)、女子でその2倍くらい(60cm)、サービスラインより下がって構える方が多いでしょう。

1歩前に踏み出す歩幅は、男子だと50cm、女子だと40cmくらいでしょうか。

そこからラケットを前に出す分、男子で80cmほど、女子で70cmほど、さらに距離を稼げます。

この前提で、シャトルを捉える位置を計算すると、男子でネットから1m、女子で1.5mとなります。
サーバー側サービスラインからの距離にすると、男子で3m、女子で3.5mです。

【レシーバーがシャトルに触る位置】



【前提条件2:レシーバーがシャトルに触る位置】
  ネットからの距離 サーバー側サービスラインからの距離
初中級男子 1m 3m
初中級女子 1.5m 3.5m



(3)サーバーの打点は高い方が良い?低い方が良い?

ここまでの考察から、レシーバーがどこで打てるかについては、移動できる距離に加え、動くのにかかる時間が関係することが、おわかりいただけると思います。

男子の場合で考えると 、ネットから1mの位置で打てるのは、0.6秒後にシャトルがまだそこを通過していない場合に限るということです。

ネットから1mの位置で打とうとすると0.6秒必要なので、それまでにシャトルがこの位置を通過していると、触れる位置はもっと後ろになってしまうのです。

実際に、サーバーの立ち位置によって、レシーバーがどこで打てるか、男子の場合で計算してみましょう。

※空気抵抗の有無による軌道の差は無視できる程度に小さいため、以下の軌道計算では、空気抵抗はないものとしています。

まず、ショートサービスラインより20cm前で、1.1mの高さからサーブした場合(ケース1)と、0.9mの高さからサーブした場合(ケース2)の2ケースを比較します。

【ケース1:ショートサービスラインより20cm前で1.1mの高さからサーブした時のレシーバーの打点】



【ケース2:ショートサービスラインより20cm前で0.9mの高さからサーブした時のレシーバーの打点】


サーバー側ショートサービスラインの位置をゼロとすると、0.6秒後のシャトルの位置は、ケース1で2.74m、ケース2で2.62mとなります。

どちらもまだ、3m(ネットからの距離で言うと1m)まで来ていませんので、レシーバーは3mの位置で打つことができます。

シャトルが3mの位置に来た時の高さ、つまりレシーバーの打点は、ケース1で1.15m、ケース2で1.18mとなります。

【レシーバーの打点(床からの高さ)】
ケース1(1.1mの高さからサーブ) 1.15m
ケース2(0.9mの高さからサーブ) 1.18m

この比較からわかることは、サーブを打つ高さが高いほど、レシーバーには低い打点で取らせることができるということです。


女子の場合も結論は同じで、計算結果はこのようになります。

【レシーバーの打点(床からの高さ):女子の前提条件で計算
ケース1(1.1mの高さからサーブ) 0.71m
ケース2(0.9mの高さからサーブ) 0.74m



(4)サーバーの立ち位置は前の方が良い?後ろの方が良い?

次に、1.1mの高さは固定にして、
・ショートサービスラインより20cm前でサーブした場合(ケース1と同じ条件)
・ショートサービスライン上(±0m)でサーブした場合(ケース3)
・ショートサービスラインより20cm後ろでサーブした場合(ケース4)
の3ケースを比較します。

【ケース1:ショートサービスラインより20cm前で1.1mの高さからサーブした時のレシーバーの打点】



【ケース3:ショートサービスライン上(±0m)で1.1mの高さからサーブした時のレシーバーの打点】


【ケース4:ショートサービスラインより20cm後ろで1.1mの高さからサーブした時のレシーバーの打点】


サーバー側ショートサービスラインの位置をゼロとすると、0.6秒後のシャトルの位置は、ケース1で2.74m、ケース3で2.64m、ケース4で2.54mとなります。

どれもまだ3mまで来ていませんので、レシーバーは3mの位置で打つことができます。

シャトルが3mの位置に来た時の高さ、つまりレシーバーの打点は、ケース1で1.15m、ケース3で1.13m、ケース4で1.11mとなります。

【レシーバーの打点(床からの高さ)】
ケース1(サービスラインより0.2m前でサーブ) 1.15m
ケース3(サービスライン上(±0m)でサーブ) 1.13m
ケース4(サービスラインより0.2m後ろでサーブ) 1.11m

この比較からわかることは、サーブを打つ位置が後ろであるほど、レシーバーに低い打点で取らせることができるということです。

※余談ですが、ショートサービスラインより1m後ろからサーブすると、レシーバーの打点は1.06mまで下がります。ミックスダブルスで、男子のサーブをプッシュしづらいのには、こういう理屈があったんですね。


女子の場合も結論は同じで、計算結果はこのようになります。

【レシーバーの打点(床からの高さ):女子の前提条件で計算
ケース1(サービスラインより0.2m前でサーブ) 0.71m
ケース3(サービスライン上(±0m)でサーブ) 0.69m
ケース4(サービスラインより0.2m後ろでサーブ) 0.68m


ここまでの結論をまとめます。

レシーバーがネットから1m(女子だと1.5m)の距離までしか踏み込んでこないという前提に立てば、下がった位置から、できるだけ高い打点でサーブすると、最も打点を下げさせられるということがわかりました。




(5)レシーバーがネット近くまで踏み込めるとしたら?

初中級では少数派ですが、サービスラインぎりぎりに立って飛び込むようにプッシュしてきたり、利き腕側の足を出して距離を稼ごうとするレシーバーもいます。

そこで、レシーバーがネットから50cm(女子だと1m)の距離まで踏み込めるという前提に立つとどうなるか考察します。



先ほどの3つのケースで、0.6秒後のシャトルの位置を比較すると、こうなります。

【ケース1:ショートサービスラインより20cm前で1.1mの高さからサーブした時のレシーバーの打点】



【ケース3:ショートサービスライン上(±0m)で1.1mの高さからサーブした時のレシーバーの打点】


【ケース4:ショートサービスラインより20cm後ろで1.1mの高さからサーブした時のレシーバーの打点】



【0.6秒後のシャトルの位置(ネットからの距離)】
ケース1(位置:+0.2、高さ:1.1m) 74cm
ケース3(位置:0、高さ:1.1m) 64cm
ケース4(位置:-0.2、高さ:1.1m) 54cm

いずれも、ネットからの距離が50cm以上あるので、レシーバーはこの時の打点で打てることになります。

【レシーバーの打点(0.6秒後のシャトルの高さ(床からの距離))】
ケース1(位置:+0.2、高さ:1.1m) 1.32m
ケース3(位置:0、高さ:1.1m) 1.36m
ケース4(位置:-0.2、高さ:1.1m) 1.41m

先ほどの結果とは逆で、ケース1が一番打点を下げられます。

こうなるのは、前からサーブした方が、シャトルが短い時間で早くネットを越える分、レシーバーが前で触れなくなるからです。

ケース4はケース1より9cmも高い打点で打たれてしまいます。
ネットに近い位置での9cmは大きな差と言えるでしょう。

この考察からわかるのは、レシーバーの前への踏み込みが大きいほど、前から打つサービス(早くネットを越えるサービス)の方が打点を下げさせられるということです。


女子の場合も結論は同じで、計算結果はこのようになります。

【0.7秒後のシャトルの位置(ネットからの距離)】
ケース1(位置:+0.2、高さ:1.1m) 117cm
ケース3(位置:0、高さ:1.1m) 108cm
ケース4(位置:-0.2、高さ:1.1m) 100cm

【レシーバーの打点(0.7秒後のシャトルの高さ(床からの距離)):女子の前提条件で計算
ケース1(位置:+0.2、高さ:1.1m) 1.02m
ケース3(位置:0、高さ:1.1m) 1.06m
ケース4(位置:-0.2、高さ:1.1m) 1.11m


参考までに、ショートサービスが打たれてからシャトルが着地するまでにかかる時間は、約0.9秒です。

0.6秒後というのは、サービス軌道に沿ってシャトルが全体の2/3だけ進んだ位置ということになります。

ネットの真上よりも、ネットから60〜70cm進んだところでのシャトルの高さを気にした方がよいのです。

ケース1だと、ネットの上10cmのところを通しても、レシーバーが打つ時には、そこから30cmも下がります。

ショートサービスは、ネットすれすれを通すものと思われていたもしれませんが、軌道が良ければ、もっと上を通しても問題ないのです。




<結論>

平均的な初中級の男子選手が相手なら、ネットの上10cmを通して相手サービスラインより10cm先に落とすようにサーブしても(つまり、ネットとサービスラインに対して10cmずつ余裕を持っても)、ネットより20cm(女子選手なら50cm)低い打点で取らせることが可能です。

こういう軌道のサーブを打っておけば、下向きにプッシュされるリスクは極めて低いということです。

プッシュを警戒し、ネットすれすれを通り、サービスラインぎりぎりに落ちるようなサーブを打つ必要などないのです。

また、プッシュされにくいサーバーの立ち位置と打点は、次の2つに集約されます。

レシーバーの前への踏み込みが大きければ、前から高い打点でサーブした方がプッシュされにくくなります。

レシーバーの前への踏み込みが小さければ、後ろから高い打点でサーブした方がプッシュされにくくなります。


ただ、踏み込みが小さいということは、サーブが大きく浮かない限りプッシュされないとも言えますので、実のところ、このような相手に対しては、前からサーブしても、下がってサーブしても大差ないでしょう。

むしろ下がりすぎると、距離が長くなる分、サービス軌道のバラツキも大きくなりますので、サーブが浮いたり、ネットに掛かる確率を上げてしまうかもしれません。

そういう意味で、広く通用し、効果とリスクのバランスも良いのは、前から高い打点で打つサービスの方だと言えそうです。

※計算結果にはある程度の誤差が含まれます。
※研究成果、見解、アドバイス等は、すべての方の成功を保証するものではありません。




<ショートサービスを成功させるためのアドバイス>

サーブを打つ前に、レシーバーの立ち位置を見ましょう。

サービスラインより靴1足分以上下がって立っているなら、多少浮いても大丈夫と思って、自信を持ってサーブしましょう。

逆に、ラインぎりぎりに立ってプッシュを狙っているようなら、早めにロングサービスを見せて、ショートサービスに山を張らせないようにしましょう。

サーブはなるべくコンパクトに打った方が、タイミングを合わせづらくなりますので、その点も意識して練習しましょう。

それでもタイミングが合ってしまうようなら、サービス前に静止する時間の長さを変えてみると、タイミングを外しやすくなるでしょう。




<次回研究予告>

ネットの上10cmのところを通しても、レシーバーの打点をネットより20cm低くできることがわかったので、まだもう少し上を通しても良さそうです。

どれくらいまでなら、下向きにプッシュされないのでしょうか?

また、プッシュされない範囲にサービスのバラツキを収めるには、どうすればよいのでしょうか?

次回は、プッシュされにくく、ネットにも掛けにくい理想の軌道に迫ります。




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